お久しぶりです。忙しい忙しいと思っていたら、ついついご無沙汰になってしまいました。
今日の曲は、「The Morning Call」です。これは比較的新しい曲で、稲葉さんソロのアルバム「Hadou」に収録されている曲です。恐らく、「波動」という歌詞から、このアルバムの代表とも言える曲なのだと思います。
私は当初、聴き始めの時は、「CAGE FIGHT」や「絶対(的)」などの他の曲が好きだったのですが、聴きこんでいくうち、自分の中でHadou最高の曲は、この曲なんだと気付きました。
稲葉さんソロのアルバムは、ドロドロとした、陰鬱な感情を歌った「マグマ」からはじまり、「志庵」「Peace of Mind」そしてこの「Hadou」へと続くわけですが、ひとつ言えることは、1stアルバムの「マグマ」と「Hadou」は、曲として全く別物となっているということだと思います。
「Hadou」の曲は結構B'z的といいますか、パワーがある曲が多いですが、そのジャケットが示す通り、なんというか湿度が低くてカラッとしているんですね。乾いた白い風がブワッと吹いてくるような、そんな清々しいエネルギーのようなものが感じられる曲が多いです。身体の中が一気に浄化されていき、かつパワーがみなぎってくるような、何か吹っ切れた感触さえあります。
そんな「Hadou」の代表曲である今回の「The Morning Call」ですが、その魅力のひとつに、歌詞と曲調が示す、綺麗な色彩感があります。本当はこの曲は絶対絵を描きたいなと思っていたのですが、なかなか時間が取れそうにないので、とりあえず醒めないうちに愛だけでも語っておこうと思った次第です(笑)。
この曲が示す色は、「黄金色に海が輝いた」「向日葵色に空が染まってゆく」という歌詞が示すとおり、黄色です。それも圧倒的で神秘的な黄金。この時の主人公の心情には、稲葉さんの独特なあの陰鬱さは、なんと欠片も見当たらない。
この欠片も見当たらないってのはすごいことだと思うんです。これマグマの諸曲と比べてみると、いや一体この10年近くで何があったんだと思える変わり様です。私は、稲葉さんの歌詞の魅力のひとつはその独特な湿度といいますか、そういったものだとずっと前から思っており、またそれに惹かれていた部分がありましたらから、これは本当に衝撃でした。
「神様でもいそうな気配がして」「とぎれそうでとぎれない神秘の波動」…こういった言葉選びから紡ぎ出される主人公の気持ちには、切なさはあれど、曲がったものが何一つ見当たりません。自分の、彼女に惹かれる気持ちを、ごくごくストレートな発露として受け止めています。
そして、もう一つの魅力は、この歌詞の持つ壮大さです。輝くのは海であったり空であったり、「きみの波動」が「せつない街の空気を震わせ僕に届」いたり、とにかく「きみの波動」はスケールがでかい。
「君の幻を追いかける日々」とあるので、恐らくこれは失恋後の歌になるのでしょうが、しかし歌詞と曲調を総合的に考えてみると、私には、この曲から、どうにも、失恋に悩む男の悲哀には感じられない。むしろ、波動を届けてくれる彼女の存在に感謝しているかのようです(完全に憶測の域になってしまっていますが…)。
この清涼感というか、澄んだ空気感が、稲葉さんが年齢を重ねられた結果なのかは、私には到底想像がつきませんが、私はこの曲が、初期~中期のB'z・稲葉ソロにはなかった新しい稲葉さんの魅力を存分に装備した、全く新しい曲なんだと信じています。以前の稲葉さんの曲は、心に溜まった老廃物を一気に燃やして活性化させてくれる曲が多かったように私は感じていますが(これはこれでもちろん素晴らしいのですが)、この曲は、老廃物ごと一気に強風で吹き飛ばして、そのまま上空まで急速に巻きあげてくれるかのようです。
この変化は、稲葉さんがアーティストとして、終わるどころか、更なる進化をしている証明でもあると思います。
私事ですが、とりわけこの曲は、私の私生活に多大なるパワーをもたらしてくれました。このブログを始めようと思ったのも、言ってしまえば「Hadou」を聞いた影響です。心が表れるようなパワーを求めている人に、この曲はとてもオススメです。