今日はこれです。「恋心(KOI-GOKORO)」。
(KOI-GOKORO)ってなんやねんっていつも思うのですが、まあそれはいいでしょう。言わずと知れた超人気曲です。
B'zの楽曲は、自己満足成分の高い曲と、明らかに売りに行っている曲の2種類に大別されると思います。とりわけ、シングルの表や、アルバムの代表曲などは、キャッチーなメロディや、パワーあふれる楽曲だったり、万人に受けやすく作られていると感じます。そしてそれを狙い通りに売ってしまうことも、B'zのお二人のポテンシャルの高さを表していると思います。
しかし、そんなお二人でも、たまに大きなミスをしでかすことがあった…その一つが、この「恋心」を、2nd beatに入れてしまったことです。
この曲は、シングル「ZERO」の裏にあたります。どういうわけか、本人たちも人気が出ると思っていなかった裏の曲が、凄まじい人気を誇り、あろうことか表の「ZERO」より人気が出てしまいました。しかしこのエピソードこそが、この曲が名曲たる所以の一つではないでしょうか。売るつもりではなかったのに売るつもりの曲より人気が出てしまったという…。
また、この曲には振り付けがあります。どうやらコアなB'zファンの方々は当たり前のように踊れるようですが、私には踊れません(笑) そこまで難しいものでもないので、いつか動画を見て習得したいなと思っています。
楽曲の感想に移ります。のっけから、少し抜いた、切なめに歌う稲葉さんの声に心を揺らされます。
この曲のタイトルは「恋心」であり、はじめから、「先生」の報われない恋の話が綴られるわけですが、どうも、報われない恋だが何とか完遂させたいという切実な思いはどこか感じられない。これは曲の最後に分かることですが、この曲のテーマは確かに「恋心」を含んでいますが、総括のテーマは、必ずしもそれではないのです。そして、そのことが、この曲を単なるラブソングにとどまらない名曲とし、また、多大な人気を誇る理由になったと思っています。
このことが初めてわかる部分がここです。「抱き合った仲間ともいつかは離れていくけれど…」
あれ? これは報われない恋の辛さを歌った曲ではなかったのか…? そうではありません。
この曲は、過去、とりわけ青春の日々を懐古する曲なのです。その一番のきっかけが、かつて抱いた「恋心」であって、報われない恋の辛さを吐き出したくて歌われた曲ではないのです。
むしろ、「忘れない いつまでもあの恋 なくさない 胸をたたく痛みを」と、努めて忘れないようにしている点で、主人公は、この失恋をかなり肯定的なものとして考えています。
この、「報われない恋」から「懐古」までの移行が絶妙です。失恋が後の人生の大切な思い出となることや、青春時代の感情の機微を懐かしむこと、それらの感情がないまぜになった何かは、言葉で言い表せないまでも、確かにみんなの共通認識として存在しているのです。その感情やニュアンスは、確かにこのようにして言葉で説明すれば、ああ、あるよね、と共感を得られるのかもしれませんが、それではあまりにも野暮です。そして、その固有名詞のない感情を、あえて説明的な表現を使わず、婉曲的に指し示しきってしまうところに、稲葉さんの手腕が見えるのだと思います。
また、どうでもいいことなのですが、この過去のものとして語られた失恋の主体は、一体どんな人だったのでしょうか…。自分のことを「先生」と呼んでますが、これは、まさか自分の生徒への恋愛感情だったのか…? それとも、稲葉さんは大学時代に家庭教師をされていたようですので、家庭教師としての自分を「先生」と表現したのか…? このへんが何だか犯罪チックで大丈夫か?と思ってしまいますが、まあそこはスルーしましょう(いいのか?)。
もしかしたら、そこに現実的な視点から切りこむのは野暮以外の何物でもないのかもしれません。実際、「先生」という表現は、他のいかなる知識も、彼女とつきあうことに関しては役に立たない…という状態を表す隠喩として、これ以上ない言葉選びだと思います。そして、「授業」や「シャンプーとリンス」といった言葉を併用されることで、この曲に、ある種のポップさをプラスし、「失恋」ではあるが、陰鬱とした雰囲気にならないようにする効果を発揮していると思います。
この曲の素晴らしさについては、書いても書いても書ききれる気がしませんが、そろそろ私の語彙も尽きてきたので、このあたりにしようかと思います。
「松本」という固有名詞を出してみたり、ミルクティーの後の「イェー」が何なのかとか、ネタにも困らないこの曲、これからも、いつまでも忘れずに生きていきたいものです。
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